スイスの知られざる名門マニュファクチュール、〈コルテベール〉が手掛けた1940年代のクロノグラフ。 通常は右と左にインダイヤルを持つのがクロノグラフの多数派ですが、こちらは上下に分積算計と永久秒針を配するユニークな設計。この設計はムーブメントの設計に由来するもので、搭載する〈ヴィーナス〉社のCAL.170は、インダイヤルを縦に配列する数少ないクロノグラフ・ムーブメントのひとつ。ヴィーナス社はクロノグラフ・ムーブメント専門メーカーで、その高級ラインはバルジュー社に比肩するハイエンドなものが知られています。 ブラックミラーフィニッシュの底光りする艶やかな黒文字盤に、シャイニーグレーの配色が外周部を飾るツートーンのカラーリングが秀逸。カッパーカラーのシックなインデックスに対して、シルバーの針類という好対照な色遣いも、視認性を確保する役目を忘れていません。その優美な曲線美のリーフ針は、同時に上質な高級感を引き立たせています。 文字盤外周部の配色は俗に「ハチマキ」と呼ばれる意匠で、ミニッツインデックスを明瞭に視認できるほか、これを境にして外側にタキメーター、内側にテレメーターを配置。クロノグラフ針による様々な計測の同時視認を助ける設計ですが、デザイン性の面でも効果を発揮しています。 やや大振りなケースサイズに比べ、ベルトサイズを16mmと比較的細身に設計されているのもユニークな点。ラウンドケースはラグにかけてシェイプされた優美な曲線は、本来軍用機に端を発するクロノグラフとは毛色の異なるドレッシーな横顔を見せてくれます。全体的に使用された形跡が少なく、ニアミントコンディションと呼べる綺麗な状態をキープしているのも魅力的な一本です。