多くの〈スミス〉の腕時計を取り扱う当店でも、初めてお目にかかる幻の一本が入荷しました。 18金の金無垢ケースを採用した名機「エヴェレスト」です。 エヴェレストは、登山家エドモンド・ヒラリー卿が1953年にスミスの腕時計を身につけて達成した、人類初のエヴェレスト登頂を記念して作られた記念碑的モデル。デラックスと並んで様々なバリエーションを生んでいますが、製造数自体はそれほど多くありませんでした。 それに輪をかけてこの個体を貴重たらしめているのが、言わずもがな18金の金無垢ケースです。当店もその存在を知ったのは、この個体を見たのが初めて。おそらく国内でもお目にかかることはほぼないと思われます。スミスだけでなく、当時英国市場で流通していた腕時計や懐中時計の金無垢ケースは決まって9金。指輪などのジュエリーを除き、18金の英国時計自体が幻なのです。 9金に比べやや黄色みの強い色味と、高い純度からくる重量感。さらにラグに見られる手の込んだカッティングも相俟って、ハイエンドなデザインによる存在感も他モデルと一線を画す仕上がり。同年代のスミスの腕時計には珍しい、大振りなアラビア数字のアップライトインデックスに加え、内側にミニッツインデックスを配するクラシカルなデザインなど、そのルックスにも個性と気品を兼ね備えた独自の魅力を感じます。 ムーブメントは伝統の”1215(トゥエルブフィフティーン)”を搭載。独特の流線形のレイアウトや粒金仕上げ、厚みがあり頑丈なパーツで構成される質実剛健な作りなど、美しさと耐久性を兼ね備えた一機。"5910"という見慣れないシリアルナンバー、スムーステンワを採用している点などから、おそらく特別仕様の機体と思われます。耐震装置はキフショックを装備。 文字盤にうっすらとした日焼け、ケースに若干の小傷が見られるもののコンディションはかなり良好。ラグのエッジも十分に残し、当時の高級感を今に伝えています。