こちらは英国の時計メーカー〈スミス〉が、J.W.ベンソンに製造を委託されて作られた腕時計。戦後純英国製ムーブメントの製造を開始したスミスは、J.W.ベンソン以外にもOEMで多くのブランドや宝飾品店の腕時計を製造しており、スミスが有していた様々なケースや文字盤のバリエーションの中から選び、そこに好きなブランドネームを入れるという形式で行われていました。 その中でも特に結びつきの強かったJ.W.ベンソンは、スミス初期から存在したこちらのローマ数字インデックスを基調としたクラシカルな文字盤を特に好み、1960年代に入るまでいくつかのバリエーションを経ながら一貫して同様のデザインの腕時計を販売し続けていたようです。こちらの腕時計は、その最初期にあたる希少な個体で、細身のブルースチール製バトン針と小振りなスモールセコンドが特徴的。 やや大振りなラウンドケースは、デニソン社と並んでスミスが多く採用していた〈BWC(British Watch Case Ltd.)〉社製。薄く直線的なラグデザイン、円筒形のケースフォルムといった、シリンダーケースと呼ばれるユニークなケースデザインも魅力的。幾何学的デザインが特徴的な文字盤と絶妙にマッチしています。 スミス製のJ.W.ベンソンの腕時計に搭載されるムーブメントは、スミスが誇る粒金仕上げの名機CAL.1215がベースとなりますが、必ず2番車に軸受け石を追加し16石のハイエンドモデルが採用されています。ブリッジにJ.W.ベンソンの刻印が入っているのも特徴です。