今回ご紹介する物は、数あるスミスの腕時計の中でも幻の一本。その少ない製造本数と短い製造期間ゆえ市場に出ることが極めて少ないモデルです。 最大の特徴は金無垢のデニソンケース。1940年代末に製造された初期モデル特有の小振りで丸みを帯び、それでいて力強いフォルムを持っています。スミスのアーリーモデルはステンレススチールかクロームプレートが大勢を占めており、こちらの金無垢が採用された初期型デニソンケースの存在感はやはり格別。ラグのベルト取付け仕様がパリス管ではなくバネ棒式となっている点も、当時最高品質の加工技術を持っていたデニソン社ならではと言えます。 文字盤には英国時計らしさが前面に出た、影付きフォントのアラビア全数字インデックスが夜光塗料を伴って配されます。クラシカルなブルースチールも同様の夜光塗料が盛られたミリタリーテイストも絶妙。”SMITHS”とメーカー名のみ表記される素朴でクラシカルなスタイル。 搭載される英国製ムーブメントは、スミスが誇る名機CAL.1215。こちらの個体は1947年〜1950年の間混在していたいくつかのバリエーションのひとつで、パーツの粒金仕上げに移行した最初期、ブリッジに”SMITHS”の刻印を残す貴重な一機となります。