ほぼ未使用に近いニューオールドストック(NOS)のコンディションを維持した1940年代の腕時計。〈プレシア〉というフランス語のブランドロゴを持っていますが、その背景はほとんど謎。しかしながら、この個体はヴィンテージウォッチの魅力を凝縮した高い完成度を備えています。 文字盤はブラック。ミリタリーウォッチの多くはこの黒文字盤を採用していますが、ただ黒いわけじゃない。少ない光源でも高い視認性を発揮してくれる、ブラックミラーダイヤル、あるいはギルトダイヤルと呼ばれる光沢に仕上げられた黒文字盤です。 こちらはアラビア数字や針に夜光塗料を施したものですが、当然半減期を過ぎているので光ることはありません。しかしそれ以外のゴールドで描かれたミニッツインデックスやロゴ等には、いわゆる「下地出し」の技法が用いられています。この技法は、まず下地となるゴールド等の文字盤に特殊なコーティングインクでインデックスを描き、その上にブラックの塗装を施します。最後にコーティングだけを専用の溶剤で落とすと下地のゴールドがインデックスとして描き出されるという、非常に手の込んだ製法です。 単なるプリントの場合、摩擦や経年劣化などによってインデックスが薄くなったり消えたりすることがありますが、下地出しの場合その心配はなく、漆黒の文字盤にインデックスがくっきりと光を受けて浮かび上がる独特の美しい文字盤を永く保つことができます。多少暗かろうと視認性を損なわない利便性に加え、高級感を兼ね備えた人気の高いディテールのひとつ。そのデザインも、レイルウェイ・インデックスや折り重なる同心円に代表されるアール・デコの影響を強く受けています。 裏蓋はスクリューバック式となっており、機密性を維持した使い勝手の高さがポイント。オープナーノッチの数が4つという珍しい「クアトロ・タケ」という点も見逃せません。これは高い人気を誇る3つのノッチが特徴の「トレ・タケ(Tre Tacche)」とも魅力を共有しています。
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