馬の蹄がトレードマークの〈マスコット〉。誰も知っている人はいないであろう、このブランドですが、過去何度か当店でもお取り扱いがあったのが、こちらのモデル。1940年代製です。

優美なドレープデザインがケースサイドからラグにかけて流れるラウンドケースが特徴的で、見る角度が変わるとまた違った表情を見せてくれる、奥行きのあるシルエット。リューズがフィットするようベゼルにくぼみを設け、その流線型をできる限り邪魔しないような工夫も見られます。

夜光で配されるアラビア全数字インデックスとペンシルハンドのバランス感覚が絶妙なのも、このモデルの特徴であり魅力のひとつ。夜光というとミリタリーウォッチやスポーツウォッチといった力強いイメージが先行しますが、この腕時計はむしろドレッシーな印象。あえてペンシルハンドを細身に、やや短めにデザインしてあるため印象が外側から内側へ導かれるような凝縮感を演出しています。

そしてなによりもまず、ほとんど製造当時の新品状態を保ったコンディションの良さが素晴らしい。裏蓋に当時のコーティング材が残っており、ほとんど着用せず半世紀以上の長い年月眠っていた非常に貴重な存在と言えます。ベルトも当時の未使用状態のままのレザーベルトが装着されています。

搭載するムーブメントは、エボーシュS.A.の中でも数が少ない〈アローニョ（AROGNO）〉社のCAL.120。ユニークなブリッジレイアウトが特徴です。