ロイダーは英国に当時存在した時計メーカー。ほとんど資料がないため詳細は不明ですが、イギリス国内の会社が社員への贈答用に注文した腕時計が散見されることから、スミスやJ.W.ベンソンと並ぶ英国の高級時計メーカーであったと思われます。英国王室を思わせるクラウンがモチーフのブランドロゴが特徴。 こちらは堅牢な防水構造とフレキシブルな可動式ラグを備えたステンレススチールケースを採用したユニークな一本。ラグは腕にフィットしやすいよう180度スイングできる設計の他、そのソリッドでスタイリッシュな「用の美」もまた大きな魅力です。スクリューバックのコインエッジもまた、重厚感と力強さを演出しています。 特に注目に値するのはロレックスの初期のオイスターケースと同じ防水構造が採用されている点。コインエッジが特徴的な裏蓋だけでなくベゼルもねじ込み式となっており、ムーブメントに取付けられたネジ付き中胴をミドルケース内部で挟み込むという、非常に手の込んだ内部構造を持っています。 このケースを手がけたのは、英国に存在したE.B.E.社というケース専業のメーカー。英国市場でしか流通していなかったこと以外謎に包まれた存在ですが、このE.B.E.社製のフレキシブルラグ×前後ねじ込み式の防水ケースは、ロンジン以外の、とりわけ英国のジュエラーズウォッチにも例を見ることができます。ただしこのロンジンの場合は31mmのラージモデルで、通常は28mmと小振りのサイズ。ただでさえ希少なモデルのさらに少数派という、幻の逸品です。裏蓋に “REMOVE MOVEMENT FROM FRONT AND UNSCREW BEZEL” と、特殊な構造ゆえの注意書きがあるのも面白い点。 搭載するムーブメントは〈フォンテンメロン(FHF)〉社のCAL.70をベースに、ブリッジにストライプフィニッシュの磨き仕上げが見られたり、パーツのエッジが丁寧に面取りされていたりと、独自のチューンナップが見られる高級仕様のムーブメント。フォンテンメロンは1793年にスイス・フォンテンメロンに設立された、エボーシュSA参加メーカーの中でも最古の歴史を誇るムーブメントメーカー。ロレックスやチュードルといった高級メゾンも同社のエボーシュを使用することもあり、高い信頼性を持っていました。
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