文字盤上に配された”SMITHS”のブランド名と誇らしげな王冠マーク、そして”DE LUXE”のモデルネーム。「デラックス」シリーズがおそらく〈スミス〉の腕時計の中で最も高い人気を誇るのは、そのデザインの豊富さもさることながら、信頼を寄せられる高い機能性にあるとも言われます。そしてその機能性を支えたのは英国製の自社ムーブメントでありました。 1953年、エドモンド・ヒラリー卿のエヴェレスト人類初登頂の際に彼が身につけていたのが、史上初となる英国製ムーブメントを搭載したスミスの腕時計。それも、同じく英国のウォッチケースメーカー〈デニソン〉社が手掛けた「アクアタイト」と呼ばれる防水ケースを採用したデラックスでした。 こちらは、そのヒラリー卿が身につけていたものと同様のスペックに、総金無垢のデニソン社製アクアタイトケースを採用した非常にゴージャスな一本で、コレクター間ではヒラリーモデルとかエクスペディションモデルと呼ばれ、極めて希少かつ高いコストが積まれた名品です。 文字盤デザインは、赤い矢のモチーフを持つスミスのアイコン的デザインのセンター秒針が印象的。やや大振りなアラビア数字と楔形インデックスのコンビネーションという1950年代に流行したミッドセンチュリースタイルに対し、文字盤の内側にミニッツインデックスを敷く1920年代のアール・デコ期のスタイルを採用。クラシックとモダンが見事に融合した普遍的なデザイン性、そして文字盤表面の外周と内周を異なる仕上げを施し、光の差し込み方で刻々と表情を変えるツートーン仕上げが凝縮感のある表情を形作っています。 ムーブメントはCAL.1215のセンターセコンドモデル、"27.CS.”を搭載。キャリバーナンバーは「27cm、センターセコンド(Center Second)」を意味しています。1215同様、優美な流線形のレイアウトや独特の粒金仕上げが美しいムーブメントですが、厚みがあり頑丈なパーツで構成される質実剛健な作りも見逃せません。 着用するベルトは〈カシス〉のゴートスキンレザーを使用したハイエンドラインを着用。フラットなシルエットや味わい深い質感がヴィンテージベルトを思わせます。