スイス・グレンヒェンの知る人ぞ知るウォッチメーカー〈フェルコ〉が1940年代に手掛けた腕時計が、未使用状態のニューオールドストックで発見されました。コンディションの良さもさることながら、現行品にも匹敵するサイズ感から80年前に製造された腕時計とは思えないタイムレスな魅力に溢れた一本。 華やかな印象を放つカッパーダイヤルと、力強くも正統派のラウンドケース。しかしながら35mmという、1940年代にわずかに製造されていたラージサイズのボディがとにかくインパクト大。それでいてドレッシーな薄型のシルエットに仕上げてあるため、大振りな腕時計につきまとう野暮ったさは皆無です。 もう一つのユニークな魅力は、アール・デコスタイルもしくはポンティフハンドと呼ばれる輪のモチーフを持つ針。優雅なドレスウォッチを一層気品に満ちた表情に仕上げるディテールですが、その存在はごく希少なもの。ヴィンテージウォッチ特有のブルースチールは美しく青い煌めきは、製造当時のまま。 搭載するムーブメントは、A.シルト(A.S.)社のCAL.1130。ドイツ陸軍のミリタリーウォッチでも多く採用された質実剛健な機体です。 非常に興味深いのが、ブリッジに一切刻印がないと言う点。ブランド名などが省かれることは多々ありますが、15石の石数を示す"15 JEWELS"や"UNADJUSTED"といった、ムーブメントにほぼ必ずと言って良いほど刻印されるものすらありません。場合によっては、販売用ではなくサンプル品として存在した個体だった可能性もあります。 ちなみに同時に発見されたブラックダイヤルの個体と全く同じディテールを持っており、両者はともに一つ所にあった対の腕時計なのかもしれません。