〈スミス〉が手掛けた傑作モデル「デラックス」。中でもこちらは9Kの金無垢ケースを纏った、ドレスウォッチの永久定番とも言えるモデル。しかも当時の純正ボックスと保証書が付属する貴重なセットで、かつスミスオリジナルのピッグスキンベルトが装着されたまま。使用感も少なく、ケースや文字盤のコンディションも極めて良好な個体です。 文字盤上に配された”SMITHS”のブランド名と誇らしげな王冠マーク、そして”DE LUXE”のモデル名。「デラックス」シリーズがおそらくスミスの腕時計の中で最も高い人気を誇るのは、そのデザインの豊富さもさることながら、信頼を寄せられる高い機能性にあるとも言われます。そしてその機能性を支えたのは英国製の自社ムーブメントでありました。 こちらはスミスのデラックス・シリーズでは少数派となるセンターセコンドモデル。アラビア数字と楔形インデックスを用いたアワーマーカーは当時のスミスが好んだスタイルですが、やや小振りに仕上げることで外周部に配した秒スケールの視認を促す機能的なデザイン指向が伺えます。実はこの文字盤デザインは極めてレアな個体。1955年という比較的初期のセンターセコンドモデルで、金無垢ケースを採用したハイエンド仕様は意外にも数少ないバリエーションです。 他のデラックスに比べ、ケースがやや大振りなのもこのモデルの特徴。優雅にして力強いラグデザインも魅力的です。こちらの金無垢ケースを手掛けたのは、デニソン社と並んでスミスが数多く採用していた〈BWC(British Watch Case Ltd.)〉で、”LONDON MADE”の刻印がトレードマーク。しかしよく見られるものと異なり、こちらは裏蓋がかなりボリュームを持った曲線を描いている特徴的な個体です。 ちなみに裏蓋に見られる"SMITHS MOTOR ACCESSARIES LTD."とはスミスのコアビジネスとなる自動車計器製造部門の会社で、言わばスミス社が自社社員に自らの腕時計を贈った格好となる面白い背景を持った一本と言えます。 ムーブメントはCAL.1215のセンターセコンドモデル、"27.CS.”を搭載。キャリバーナンバーは「27cm、センターセコンド(Center Second)」を意味しています。1215同様、優美な流線形のレイアウトや独特の粒金仕上げが美しいムーブメントですが、厚みがあり頑丈なパーツで構成される質実剛健な作りも見逃せません。