1930年代の〈レヴュー・スポート〉。このモデルを象徴する特徴的な角型とラウンド型ケースを融合させたトノーシェイプの防水ケースに、アール・デコの影響を強く受けたセクターダイヤルを採用した腕時計です。

実にさまざまなパターンが存在しつつも1930年代から40年代早期には姿を消したセクターダイヤルとよばれる文字盤デザイン群。アール・デコの強い影響で円と直線を複合的に組み合わせて時計文字盤に落とし込むというコンセプトを共有していて、特にアワーマーカーが扇状の図形で描かれるのが特徴です。

こちらは特にその初期に見られる、主要なアラビア数字3個がセクターからドロップアウトして内周部に出てきた最もプリミティブなパターン。そのセクターも重曹的に折り重なるレイルウェイトラックとその内側の1時間毎にセクタリングされたトラックが、いずれもミラーフィニッシュを施されておりツートーンダイヤルに仕上げられている点も見逃せません。

オクタゴナルケースの要素を持つユニークなトノーケースは、肉厚でゴツゴツした個性的なフォルムが特徴で、小振りながら力強い存在感を放ちます。ねじ込み式の裏蓋を外すと、内部に防塵製・耐磁性を高める軟鉄のインナーキャップが備えられるほか、ムーブメントには耐震装置インカブロックを装備。”SPORT”の名の通りハードな着用環境が想定された堅牢な作りです。

搭載する手巻きムーブメントは自社ムーブメントのCAL.58。ブリッジのストライプフィニッシュやケースエッジの面取りといった細部の丁寧な仕上げを施された質実剛健な一機。

着用するベルトは、当店オリジナルの〈アノニム〉。イタリア・トスカーナ地方の名革ブッテーロに型押しを施した「ドラーロ」を使用。深い経年変化も楽しめるほか、その堅牢性に反して腕に馴染みやすい柔軟性があり、着用感の良さも魅力的。