スイス・ルツェルンで130年以上の歴史を今も続ける老舗宝飾品店〈ブヘラ〉。宝飾品の技術を応用したジュエリーウォッチをはじめ、ロレックスをはじめとする一流のメゾンとのコラボレーションを含む様々な腕時計のバリエーションでも知られますが、こちらは1930年代に製造された非常にユニークかつ美しい逸品です。 まず目を奪われるのが、クリスクロスと呼ばれる斜め十字のツートーンフィニッシュの文字版。極めて1930年代的なレアデザインで、光の差し込み方を変えると刻々と変化してコントラストが入れ替わるという見るものを飽きさせない奥行きのある魅力を備えています。同時代のロレックスもこの文字盤デザインを採用することがありましたが、その個体数はごく希少。 続いて独特のケースフォルムを持つステンレススチールケース。こちらはスクリューバック式以前のユニークな防水構造を採用しており、フロントベゼルとバックケースが入れ子となり、「ツバ」付きの風防をゴムパッキンで挟み込むことで防水性を確保したのち、裏側から4カ所をビスで締めるという方式。 これは俗に「クラムシェルケース」と呼ばれ、ウォッチケース専業メーカー〈シュミッツ・フレール(Schmitz Freres)〉社が1936年に特許を取得したアイディアです。さらにベゼルとラグがシームレスに一体化したフォルムは、雲上ブランド〈パテック・フィリップ〉のref.565のアイコニックなケースとデザインを共有しています。 搭載するムーブメントは、手巻き機能をあえて排除したローターの動きのみで巻き上げる完全自動巻き、いわゆる「ネバーワインド」型となります。 1920年代頃に産声を上げた自動巻きムーブメントですが、一般的には手巻きムーブメントに自動巻き機構を載せるため手巻き機能を併用するものがほとんど、それを敢えてなくし、内蔵するローターの回転のみでゼンマイの巻き上げ動力を確保した珍しいモデルです。 リューズの操作頻度が低ければ、その分故障リスクは下がる。現在でも製造数の少ない手巻き非搭載の自動巻きを搭載し、防水構造のケースを採用することで、普段使いの中でできるだけ壊れにくいような設計を実現しています。この思想は〈ロレックス〉の創始者ハンス・ウィルスドルフも同様に抱いており、後に彼は傑作「オイスター・パーペチュアル」でそれを体現させたことで知られています。 着用するベルトは、当店オリジナルの〈アノニム〉。英国の伝統的な製法で作られる堅牢なブライドルレザーを素材に使用し、英国のナショナルカラーとして知られるグリーンをセレクト。表面に白く浮き出ているのは「ブルーム」と呼ばれるロウの成分で、使用するうちに徐々にブルームが取れ、美しい光沢が生まれます。 »"anonym" OPEN-END LEATHER BELT (BRIDLE / BRITISH GREEN)