英国の都市ブラッドフォードのジュエラー〈ファウラー・オールドフィールド〉の銘が入るこちらの腕時計。スイスのウォッチメーカー〈マーク・ファーブル〉が1940年代に手掛けたもので、同社の特徴が非常によく表れた一本です。ちなみにファウラー・オールドフィールドは1897年創業、2022年に閉業したばかりの老舗宝石商で、現地でも名の知れた存在だったようです。 マーク・ファーブルは、19世紀にスイスのビエンヌで時計師マーク・ファーブルによって設立された時計工房。元はビエンヌの時計製造協会〈ユニオン・オルロジェール(Union Horlogère SA)〉に所属し、自社でムーブメントを開発・製造していた希有な存在で、同社のムーブメントは〈ユニバーサル・ジュネーブ〉や〈アルピナ〉といった名門ブランドが採用していたことでも知られています。とりわけその美しいムーブメントの仕上げは必見ですが、シンプルで均整の取れたハンサムなルックスもマーク・ファーブルの腕時計の大きな特徴のひとつ。とは言え同社の腕時計は残存個体が極めて少なく、当店も過去に取り扱った店数は片手で数えられる程度です。 この個体もアラビア全数字とブルースチールのリーフ針を用いたクラシックな文字盤で、強すぎず甘すぎないマーク・ファーブル独自のデザイン性を備えています。レイルウェイ状のミニッツレールとスモールセコンドにシルバープレート処理を施したシルバーツートーンダイヤルは、光の角度によってコントラストが大きく変化し、見るものを楽しませる魅力的なディテール。 そして当然ながらこちらは英国市場向けに製造されたもので、言わずと知れた英国の高品質ケースメーカー〈デニソン・ウォッチケース・カンパニー〉のケースを採用しています。優美な曲線を描くラウンドシェイプと、丸みを帯びたベゼル、クラシカルなフラットクラウンといったドレッシーなディテールの美しさは、ロレックスをはじめとする名門もこぞって採用するほどの定評がありました。特にフルSS製は希少で金無垢製よりも圧倒的に数が少なく、独特の硬質感とフォルムはまさにハイスタンダード。 搭載するCAL.595は、マーク・ファーブル自社製となる稀有なオリジナルムーブメントのスモールセコンドモデル。このムーブメントはユニバーサル・ジュネーブもCAL.262として導入したほか、同じくユニオン・オルロジェール所属であったビエンヌの時計メーカー〈アルピナ〉もマーク・ファーブルからムーブメントの供給を受けるなど、非常に評価の高い機体として知られています。ブリッジの表面、エッジはもちろんのこと、ネジ一本一本まで丁寧にポリッシュされた仕上げの美しさ。これこそが無名の傑作、マーク・ファーブルの真骨頂と言えます。 着用するベルトは、当店オリジナルの〈アノニム〉。英国の伝統的な製法で作られる堅牢なブライドルレザーを素材に使用し、ブラックのボディにブラックステッチを採用したオールブラック仕様です。表面に白く浮き出ているのは「ブルーム」と呼ばれるロウの成分で、使用するうちに徐々にブルームが取れ、美しい光沢が生まれます。 » "anonym" LEATHER BELT (BRIDLE / BLACK)