〈スミス〉が手掛けた傑作モデル「デラックス」。文字盤上に配された”SMITHS”のブランド名と誇らしげな王冠マーク、そして”DE LUXE”のモデル名。「デラックス」シリーズがおそらくスミスの腕時計の中で最も高い人気を誇るのは、そのデザインの豊富さもさることながら、信頼を寄せられる高い機能性にあるとも言われます。そしてその機能性を支えたのは英国製の自社ムーブメントでありました。 多くのデザイン・バリエーションを持つスミスの「デラックス」ですが、その中でも屈指のハンサムフェイスを持つのがこのモデル。やや大振りなアラビア数字と楔形インデックスの組みデザインは、1950年代に流行したミッドセンチュリースタイル。加えて文字盤の内側にミニッツインデックスを配するスタイルは、1920年代のアール・デコ期に見られたもので、クラシックとモダンが見事に融合した普遍的なデザイン性を持つ美しい腕時計です。 他のデラックスに比べ、ケースがやや大振りなのもこのモデルの特徴。優雅にして力強いラグデザインも魅力的です。こちらの金無垢ケースを手掛けたのは、デニソン社と並んでスミスが数多く採用していた〈BWC(British Watch Case Ltd.)〉。”LONDON MADE”の刻印がトレードマーク。 ホールマークから1952年製ということが分かりますが、この年はスミス・デラックスが初めてリリースされた年。しかも同年10月にモデルチェンジし、いわゆる初期モデルのデザインからその後のボリューム感を増したデザインに変更されますが、そのファーストロットという極めて貴重な個体と言えます。 ムーブメントはスミスが誇る名機、CAL.1215を搭載。優美な流線形のレイアウトや独特の粒金仕上げが美しいムーブメント。厚みがあり頑丈なパーツで構成される質実剛健な作りも見逃せません。 着用するベルトは〈アノニム〉のブラウン。イタリア・トスカーナでタンナー〈ラ・ブリターニャ(LA BRETAGNA)〉社が手掛けるバケッタレザーを使用しています。シュリンク工程で生まれる自然なシボが格調高く、また重厚なエイジングが楽しめる一品(近日販売予定)。