アール・デコの影響を色濃く残す、1930年代のロンジンの腕時計。シリンダーケースと呼ばれる、薄いベゼルが垂直に立ち上がった円筒状のフォルムに、ラグも薄く角のある独特のシルエット。文字盤正面から見ると線の細いイメージですが、サイドから見ると分厚いシルエットが目に飛び込んできます。このユニークな存在感を生み出すのは、ケース自体がエッジの切り立ったノンポリッシュのグッドコンディションを保っていることも大きな役割を担います。 そしてこの印象深いカッパーギルトダイヤルの黒文字盤こそ、この腕時計のハイライト。この場合珍しいカッパーカラーにメッキ加工した文字盤の地金にインデックスやロゴをマスキングし、そこにブラックの塗料を南宋にも重ねつつ表面を磨き上げることで、深いミラーフィニッシュの黒文字盤に下地のカッパーレターが美しく輝くという下地出し技法が用いられています。 そのデザインも、1930年代当時ドイツで隆盛したバウハウスの影響を含むアール・デコ特有のスタイルが現れており、バーインデックスというセクターダイヤルから派生した限りなくシンプルな抽象デザインが、タイムレスな魅力を放っています。バーインデックスに合わせて細身に、そしてカッパーで統一したカラーリングも秀逸。まるで最近リリースされた新作腕時計のようなコンテンポラリーな息吹さえ感じます。 ムーブメントにはCAL.12.68Zを搭載。1929年から製造開始されたモデルで、厚みのある耐久性の高いパーツが用いられたロンジンを代表する傑作機のひとつです。粒金仕上げとなるパーツの各エッジ部分には丁寧な面取りが見られるほか、心臓部のテンプ部分にはブレゲヒゲゼンマイ、バイメタル切りテンプが使用されています。古典的な超高級技術と高いクラフツマンシップが融合した美麗なムーブメント。