1940年代にアルピナが手掛けた、極めてユニークなモデルの入手に成功しました。 グレーダイヤルにブラックの縁取りを伴ったツートーンダイヤルに、やや緑がかった当時としては珍しい夜光塗料のアラビア全数字とペンシル形時分針という、力強いミリタリーテイストに上品さが加わったクールな文字盤デザインが魅力的。こちらは〈アルピナ〉が1940年代に手掛けた腕時計で、「アルピナ4」というネーミングでリリースしていたスポーツモデル。この4という数字は4つの優れたスペックを示しており、1.耐磁性、2.防水性、3.耐衝撃性、4.ステンレススチールを使用したケースという、当時最新の技術が注入されたハイスペックモデルです。 そして何と言ってもこちらは防水ウォッチケースの名家〈フランソワ・ボーゲル〉製にして、その34mmと大振りなラージケースを纏った極めて希少な一本。フランソワ・ボーゲルといえば、雲上ブランド〈パテック・フィリップ〉に数多くのウォッチケースを供給していたことで知られますが、この堅牢なスクリューバックケースの質実剛健な作りと美しいフォルムは、パテックのそれと全く同じ素晴らしい出来。ベゼル部分が反り返った珍しいシルエットも、高度なケース加工技術を要するこだわりのディテール。 しかも注目に値するのが、ユニークなラグデザインです。ラグの内側に窪みのようなデザインを伴ったもので、僕はこのディテールを見た瞬間に買い付けを決めました。当然ながらフルオリジナルですが、これと同じ個体が現存するのか否か、というレベルのウルトラレアな個体です。 ボーゲルケースならではのインナーキャップを備えた二重蓋構造の防水ケースに搭載するムーブメントは、耐震装置インカブロックを備えたアルピナの自社ムーブ、CAL.592。これぞアルピナと言わんばかりの肉厚にして流麗なブリッジとパーツ類が質実剛健なムーブメントです。美しく面取りされたブリッジのサイドエッジにも職人気質な同社のクラフツマンシップが透けて見えます。 装着したベルトは〈カシス〉によるホーウィン社のクロムエクセルレザーを採用した特別仕様。マットブラウンのボディは肉厚で、共色のステッチがモードな印象です。