英国で初めて純国産の腕時計ムーブメントを開発・量産に成功した〈スミス〉。1947年に腕時計の販売を開始し、1952年にベストセラーモデルとなる「デラックス」を発表。エドモンド・ヒラリー卿のエベレスト登頂の際にも同社の腕時計が採用されたことも拍車をかけ、スミス・ブランドは確固たる地位を得ることになりますが、その中でも異色の存在と言える銀無垢クッションケースモデルがこちらです。 裏蓋の刻印に見られるイギリスの化学製品メーカー〈インペリアル・ケミカル・インダストリーズ(ICI)〉社は、長年に渡り社員への記念品としてスミスをはじめとした英国ブランドの腕時計をオーダーしていました。スミスはその代表的なブランドで、とりわけ銀無垢のクッションケースは1940年代から一貫しています。 こちらの腕時計が製造されたのは1959年。モダニズム全盛の時代にありながら、まるで1940年代の腕時計を彷彿とさせるクラシカルな文字盤デザインが特徴です。ちなみにICI社の別注でしか存在しないこのモデルは、あくまでプレゼンテーションウォッチとして製造されていたもので、当時市販品ではありませんでした。そのためICI社とスミスのこだわりから生まれた極めてユニークな存在と言えます。 英国が誇る高品質ウォッチケースメーカー、〈デニソン・ウォッチケース・カンパニー〉が手掛けるやや丸みの強いクッションケースに、夜光を伴ったミリタリーテイストの文字盤デザイン。銀無垢ならではの無骨な輝きとともに、クラシカル、ハンサム、ラギッドといった三様の異なる美意識が重なる、魅力的な仕上がりです。 シルバーのデュアルトーンダイヤルは、異なる織りのテクスチャーをアワーマーカーとそれ以外の部分とで切り替えることで、視点を変えるごとにトーンの濃淡が切り替わるという、魅力的なギミックも味わいのひとつ。 同様にユニークなのが、16石の受け石を装備したムーブメント。スミスの代名詞と言うべき英国製の自社ムーブメント”1215"は15石がベースですが、こちらは美しい琉金仕上げや独特のブリッジデザインはそのままに、二番車に大きな受け石を追加したハイエンドモデルとなります。耐震装置を装備しているのもポイント。 着用するベルトは、当店オリジナルの〈アノニム〉。自然な細かいシボが印象的なイタリアンシュリンクレザーを素材に使用しています。オイルをたっぷりと含んでいるためしなやかでしっとりとした質感があり、使い込むうちに味わいのある風合いと経年変化していきます。