フランス・リヨンのジュエラー〈A.ドレヴォン〉の銘が入った角型の腕時計。この謎に包まれたブランド、1840年頃にF. シャヴァンという時計職人がリヨンで創業した時計販売店ですが、どこかのタイミングでドルヴォン家がその事業を引き継いだとされています。しばしば後継者がいない町の割烹店を有志が引き継ぐような、伝統的な家族経営のウォッチハンドラーです。 この個体が常軌を逸しているのが、二重構造のケースを2点のクリップで固定して気密性を得るという、オメガが1930年代に製造した防水角型時計「マリーン」、その後期型となるバウムガルトナー式を採用した腕時計であるという点。バウムガルトナーケースが使用された例はオメガ以外にもジャガー・ルクルトやティソなどが見られますが、ほとんど無名のローカルブランドでありながら、一流メゾンと遜色ないスペックを誇る腕時計を企画していたということの意味は非常に大きいと思います。 搭載するムーブメントは、フルーリエ(FEF)のCAL.130を搭載。ケース内部に各国のパテントナンバーが記載されているのも印象的です。ちなみにリューズトップに見られるBの刻印は、バウムガルトナー(Baumgartner)を意味しています。 採用したベルトはイタリアの老舗タンナー〈テンペスティ〉社のバケッタレザーの中でも稀少なグレーカラーを使用した〈アノニム〉。ヴィンテージウォッチの時代においてベルトカラーはほとんどがブラウン系だった当時、オルタナティヴカラーとして古くから定番のひとつとして存在していたグレーを現代に復刻しました。