知る人ぞ知るスイスの名門〈レコード〉が手掛けた1940年代の角形腕時計。いわゆる一般的なレクタンギュラーモデルと比べ、やや肉厚で無骨なケースデザインが魅力的ですが、それは単なる見た目だけのものではありません。 レクタンギュラーケースは、そのケースのフォルム上スクリューバック式の防水構造はとれませんが、それを可能にしたのがウォッチケース専業メーカー〈シュミッツ・フレール(Schmitz Freres)〉社が1936年に特許を取得した、いわゆる「クラムシェルケース」。フロントベゼルとバックケースが入れ子となり、鍔付きの風防をゴムパッキンで挟み込むことで防水性を確保し裏側から4カ所をビスで締めるという複雑な設計となっていて、雄雌のジョイント巻真が使用されているのも大きな特徴です。 また、折り重なるレイルウェイや線の配置、それぞれのエリアに異なるシルバーのテクスチャーを切り替えたデュアルトーンなど、アール・デコの影響が色濃い緻密な文字盤デザインもまた秀逸。 ムーブメントはレクタンギュラーフォルムの手巻きモデル。レアな角型ムーブメントならではの美しい輪列構造とブリッジの側面まで磨き上げられた抜かりない手仕事が、往時のクラフツマンシップを偲ばせます。 着用するベルトは、〈アノニム〉が手掛ける英国の伝統的な製法で作られる堅牢なブライドルレザー。英国の老舗タンナー〈クレイトン〉社の独特のシボ感を持つ漆黒の銀面が高級感を醸し出す唯一無二の一本です。