リップは1867年にフランスの時計産業の中心地であるブザンソンで創業した、フランスでは非常に有名な時計メーカーです。創業当初はスイスからムーブメントを仕入れて時計を組み立てていましたが、1925年以降はムーブメントの自社開発を行い、今で言うマニュファクチュールとしての地位を確立しました。 こちらはリップ初期を代表する名作で、当時の英国首相チャーチルに贈られたことでも知られる由緒あるモデル。アラビア全数字インデックスやレイルウェイ・インデックスなど、幾何学的な文字盤デザインにアールデコ爛熟期の流行を伺えます。 ケース内部は内蓋を採用した2重構造になっており、リップの傑作キャリバーT18が搭載されています。このムーブメントの特徴は、動作を安定させるためにテンプのサイズが大きく設計されている点で、その結果四番車の軸が二番車に非常に接近しています。ちなみに、Tは"TONNEAU(トノー、樽型)"の頭文字。そのため秒針の取付位置が時計の中心に近くなり、秒針は通常のスモールセコンドのような6時の位置ではなく、時計の中心に近いところにあって、秒針の長さもわずか1mmほどという独特のデザインになっています。 角型時計は本来紳士向けの腕時計ですが、女性の方にもおすすめです。またマッチするストラップのバリエーションも広いので、アクセサリーとしてもオリジナリティを出せる奥の深いジャンルだと思います。