1930年代の魅力的なハミルトンが入荷しています。 1892年にペンシルバニア州のランカスターで創業したハミルトンは、アメリカンウォッチを語る上で最も欠かせない存在。1900年代の第一クォーターは、アメリカの好景気を象徴するような、いわゆるアメリカン・デコと呼ばれる独自の装飾性を持ったアールデコが一世を風靡しました。当時アメリカは好景気とあいまって腕時計の一大市場となり、様々なアメリカンウォッチメーカーが誕生する特筆すべき時代となります。 ハミルトンの母体となったのは、1874年創業のアダムス&ペリー・ウォッチ・カンパニー、そしてランカスター・ウォッチ・カンパニーを経て再編成されたキーストン・ウォッチ・カンパニーなどの時計メーカーでした。それらを統合し、最高級の時計だけを製作することを目標に発足したのがハミルトン・ウォッチ・カンパニーです。 こちらは1920年代から1930年代にかけて流行したクッションケースがエレガントな一本。ベゼル全面に独特のレリーフが刻まれ、小振りながら独特のの存在感を放っています。大きくはっきりとした輪郭を持つアラビア数字インデックスや、文字盤外周に見られるレイルウェイ形ミニッツトラックなど、アールデコを代表するデザインも見事。 クッションシェイプの腕時計は現代機からすると男性向けとは思えないほど華奢なイメージがありますが、当時は紳士用腕時計の中でも最もドレッシーとされたジャンルです。エレガントなドレススタイルには、いわゆるデカ厚と呼ばれる腕時計はそぐわないもの。控えめながらも静かに主張する、アンティークウォッチの鏡とも言える腕時計です。1930年代〜1950年代の腕時計に好んで使用されたビンテージのピッグスキンベルトもぴったりフィット。 ムーブメントはCAL.987を搭載。軍用時計にも使用されたこともあり、各部品も肉厚に作られ、面取りも丁寧な仕上がりが特徴で、コート・ド・ジュネーブのようなストライプ処理も施されており、「アメリカのパテック」と呼ばれた古き良き時代の名機です。高度な温度補正機構のバイメタル切りテンプや巻上げヒゲゼンマイなど、当時の最高級機のスペックをしっかりと備えている点も魅力的。