1930年代のオメガが入荷しています。 こちらはデニソンケースで知られる英国の《デニソン》社による9金無垢ケースが用いられた、イギリス市場向けモデル。文字盤の”WHITE & SON”とは、おそらく一緒に記載されたイギリスのチェルトナム(CHELTENHAM)という街の企業と思われます。クラシカルなクッションシェイプは当時最もドレッシーとされたケース形状で、やや小振りな大きさが日本人の腕に最もよくフィットすると言われる人気のスタイルです。 セクターダイヤル(東京都ダイヤル)と呼ばれる円周と放射状のラインによる文字盤デザインは、1930年代〜40年代の短い時期にだけ製造された希少な意匠。この直線と曲線の組み合わせや繰り返しが多く用いられるリズミカルなデザインは、アール・デコと呼ばれるデザイン潮流の特徴でもあり、文字盤外周のレイルウェイ・インデックスも、当時産業の象徴でもあった鉄道線路を意匠化したもので、アール・デコを最も体現したデザインと言われています。 幾何学的なラインで彩られた文字盤に一際映えるリーフ型の時分針は、ブルースチール製。鉄を焼成し酸化させることで独特の青色にするという手の込んだ技法が用いられた意匠で、鋭く仕上げられた先端は一種の職人芸です。現代ではごく一部の超高級機を除いて大量生産品が用いられており、手作業によって仕上げられるブルースチール針はほとんどアンティークでしか見られなくなっています。 搭載されるCAL.26.5というムーブメントは、30mmキャリバー以前にオメガが開発したもので、独特の質実剛健さが魅力。こちらはその中でも最も初期に製造された個体で、テンプには古い年代の高級機のみに採用された温度補正機構であるバイメタル切りテンプも採用されています。テンプをよく見ると材質の違う2つの金属の二重構造(バイメタル構造)になっており、さらに切り込みが入っている点が特徴。ケースに記されたホールマークの内容は以下の通りです。 純度: 9 / .375(9カラット金無垢) メーカーズマーク: A.L.D.(アーロン・ラフキン・デニソン) アセイ・オフィス: バーミンガム デイトレター: M(1936年) ☞その他の画像はこちら